統計学が最強の学問である
食べ歩きのブログを運営していますが読書も好きで、もちろん食べ物に関する書籍を購入することが多いのですが、好奇心が強いせいか専門書の類を購入することがあります。
少し前にハマっていたのが「統計学」で、その際に購入したのが、35万部を突破し知的教養書としては異例のベストセラーとなった「統計学が最強の学問である」です。
これは食べ物の話ですし、私は統計学の専門家でもないので、本の内容である統計学にはあまり触れず、一節にあった食べ物に関する話をお伝えしたいと思います。
本は統計学を全く知らない私にでもカンタンに読めたし、内容が非常に面白かったので興味がある人には是非とも読んで欲しいと思います。
ロナルド・A・フィッシャー
ロナルド・A・フィッシャーとは現代統計学の父と呼ばれる人です。
機械学習や人工知能(AI)などの基礎にもなっているのが、フィッシャーが完成させた「実験計画法」というものだそうで、現代においても非常に身近にある知識の礎を築いた人と言えるでしょう。
ミルクティと婦人
そんなフィッシャーが1935年に著した「実験計画法」に、ある婦人との話が実に面白いものでした。
1920年代末のイギリスで、数人の英国紳士と婦人たちが午後の紅茶を楽しんでいるときのことだった。
ある婦人はミルクティについて
「紅茶を先に入れたミルクティ」か「ミルクを先に入れたミルクティ」か、
味が全然違うからすぐに分かると言ったらしい。
その場にいた紳士たちのほとんどが婦人の主張を笑い飛ばした。
彼らが学んだ科学的知識に基づけば、紅茶とミルクが混ざってしまえば化学的性質の違いがないということだった。
しかし、ロナルド・A・フィッシャーだけは「その命題をテストしてみようじゃないか」と提案したそうです。
紅茶が先か?ミルクが先か?
フィッシャーはティーカップを並べ、婦人に見えない場所で2種類の違った淹れ方のミルクティを用意した。そしてランダムな順番で婦人にミルクティを飲ませた。
実験の詳細は統計学の話なのでここでは省略しますが、本にも婦人の回答結果と最終的な実験の結論は書かれていないそうです。
しかしその場に同席したという、H・フェアフィールド・スミスという統計学者によれば、婦人は出されたミルクティを全て正確に言い当てられたらしい。
もし彼女がランダムな5杯のミルクティを飲んでいたとすれば、すべて正確に当てる確率は2の5乗分の1(約3.1%)、もし10杯であるならば1024分の1(約0.1%)ということになる。
一杯の完璧な紅茶の淹れ方
婦人がなぜミルクティの淹れ方を識別できたのかは、2003年に英国王立化学協会が発表した「一杯の完璧な紅茶の淹れ方」というプレスリリースにある。
牛乳は紅茶の前に注がれるべきである。
なぜなら牛乳蛋白の変性(変質)は牛乳が摂氏75度になると生じることがあるそう。
もし牛乳がお湯の中に注がれると、牛乳滴は牛乳としてのまとまりから外れ、確実に変性が生じるだけの時間をの紅茶の高温に取り囲まれる。もし淹れ方が逆ならばこのような状況はおこりにくい。
しかし、このプレスリリース自体がジョージ・オーウェルという作家の生誕100周年に合わせて、彼の著書「一杯のおいしい紅茶(A nice cup of tea)」をネタにしたものだという説まである。
イギリス人の議論好きは有名だが、本場イギリスでも未だにミルクティ論争の答えは出ていない。
紅茶が先か?ミルクが先か?
「紅茶が先か?」、「ミルクが先か?」本当に正しいのはどちらなのでしょうか?
最近、フレンチプレスという抽出器具を手に入れて、自宅で飲むミルクティは、もちろん婦人の言葉を信じて「ミルクが先」です。